SES(客先常駐)で働くメリットとデメリット

SESで働くメリットとデメリットを考える

未経験からエンジニアを目指す方の選択肢の一つとして存在する、SES(客先常駐)企業。

私自身も、IT未経験から新卒で中小のSES企業へ就職しました。

当時は、大してIT業界について調べずに就職したので、自分が入った会社がSES(客先常駐型)の企業ということもわからず入社。

今思えば安易な判断でした。

ただ、SES企業で働いた2年半は、結果としてよくも悪くも非常に貴重な経験になりました。

その経験も踏まえて、今回SESとして働くメリットとデメリットについて纏めてみることにします。

読んで頂きありがとうございます。
簡単に私のプロフィールを紹介させて下さい!

  • 転職3回の30代アラサー♂
  • 新卒でSESに入社。SIerへ客先常駐してインフラエンジニア(2016年
  • IT企業(SaaS)の社内SEに転職(2018年〜)
  • 金融機関のセキュリティ担当に転職(2022年〜)
  • HR企業のセキュリティエンジニアに転職(2024年〜)
  • 保有資格はLPIC1,2 / CCNA / AWS SAA / AZ-900 / SG / RISS / ITILv4 / NSE / CISA / CISSP / 徳丸基礎試験等
  • Twitternoteもやってます


SESって何?ブラックって本当?

風通しが悪い職場のイラスト

まずは、SES(客先常駐)について、いくつか整理しておきましょう。

  1. SESとは?契約形態は?
  2. 客先常駐ってどんな会社で働くの?
  3. SESはブラックって聞くけど大丈夫?


1.SESとは?契約形態は?

SESの世間一般的なイメージは、「客先に常駐して働いてもらうエンジニアを雇用して派遣させるビジネスモデル」くらいのイメージです。

ただ、厳密に言うと、上記はSESの正しい意味ではありません。

SES(System Engineering Service)は、世間一般的なイメージとは若干異なります。

システムエンジニアリングサービス契約(SES契約)とは、システムエンジニアが行うシステム開発等に関する、委託契約の一種(委任準委任契約等)で、システムエンジニアの能力を契約の対象とするものである。


『SES契約』Wikipedia

本来の意味は、能力(技術力)を契約の対象として、その能力の対価としてお金が発生する委託契約のひとつ

世間一般的に言われているSESでは、こうした委託契約だけではなく、派遣契約や請負契約によりエンジニアを客先常駐させるパターンも含まれています。

なので、SESは「客先常駐」と言われたりします。

なお、派遣契約・請負契約・SES契約(委託)の違いを知りたい方は、こちらの記事が詳しいので参考下さい。

SESと客先常駐の違いとは?派遣・請負・準委任も一緒に説明
SESと客先常駐の違いについて知りたいですか?本記事では、大手Sierや上場企業も取り入れている、客先常駐について説明します。また、「派遣」「請負」「準員契約」との違いも解説。SESと客先常駐の違いについて知りたい方は必見です。

こうした契約形態は、クライアントからの要求に応じて異なります。

多くの客先常駐型のエンジニアは、派遣や準委任契約が多いです。

契約形態を聞くと、SES(客先常駐)にネガティブなイメージを持つ方もいるかもしれません。

私も当初はいやでした。

ただ、働いてみると契約形態なんて実質関係なくなります

エンジニアの仕事は、技術力=実力主義が物を言う世界です。

技術力のある人がそのプロジェクトを引っ張っています。

そこに、客先(クライアント)のプロパー(正社員)だろうが、常駐しているエンジニアだろうが関係ありません。

大事なのは、技術力(スキル)があるかどうかです。あとは、コミュニケーション力も。


2.客先常駐ってどんな会社で働くの?

客先(クライアント先)はさまざまですが、大きく3つの会社に分類できます。

  1. SIer(富○通、N○C等)やその関連会社
  2. 大手メーカ等の非IT業界の会社
  3. IT業界の事業会社(楽○、L○NE等)

常駐されるエンジニアの割合でいくと、1が一番大きく、3が一番低いです。

ちなみに私の場合は1で、データセンタに派遣されていました。

客先派遣するなら、断然3をおすすめします。理由は、いろいろあります。

まずは、周囲の年齢が若いです。また、3で働いている人の方が性格が良いです。そしてなにより、仕事で使う技術が新しく仕事が楽しいと思います。

逆に、1や2で働く場合、クライアントのプロパーの年齢層が40代や50代とざらにいます。おそらく1や2は年功序列で新卒から働く人が多いからです。

また、1や2のプロパーの一部は、派遣で来ているエンジニアをどこか見下す風潮があります(あくまで一部の話です、大半はいい人ばかりです)。

そして、仕事がつまらないことが多い。1や2は、古い技術を変わらず使っていたり、人力で非効率的な運用作業を、客先常駐のエンジニアにさせることが多いです。


3.SESはブラックって聞くけど大丈夫?

SESのビジネスモデルは、誰でも簡単に始められるサービスです。

そのため、中小から大企業までさまざまな規模の会社が存在します。

基本的にブラックな会社は少ないと思いますが、確実にブラックなSES企業を避けたいなら、間違いなく大手のSES企業で働くことをおすすめします。

大手のSES企業で働くメリットは以下の通り。

✔︎ 研修精度が充実している
✔︎ 資格手当が高い
✔︎ つぶれにくい

SES企業の売上は、一般的にクライアント先に常駐してもらっている社員数に比例します。

つまり、エンジニア数が多ければ多いほど、SES企業の売上も大きくなるのです。

そのため、企業として大きいほど安定しています。

SES企業の中には東証上場している会社もあるので、そこが狙い目です。


SES(客先常駐)で働く4つのメリット

さっそくSESで働くメリットについて考えてみます。

私が上げたメリットは4つ。

SESとして働く4つのメリット

①スキルがあれば稼げる
②精神的にタフになれる
③人との距離感の取り方が上手くなる
④残業が少ない


①スキルがあれば稼げる

一般にSESと言えば、IT未経験者を数ヶ月研修させた上で派遣させるパターンが多く、給料も安いと言われています。

ただ、スキルや経験値が高い人は別です

高単価で雇用されその分高い給与を稼ぐことができます。


②精神的にタフになれる

客先で働くということは、そこの社員(プロパー)と一緒に働くということです。

プロパーと働いていると、年収や福利厚生等で格差を感じることがあります。

それをあからさまに自慢してくる社員もいます(基本的にはいませんが)。

それは業務においても当てはまります。

客先で常駐エンジニアがやる仕事は、主に既存の運用業務やスキルをあまり必要としない業務が多いです。

一方で客先のプロパーは、設計や構築業務といった上流工程の業務を行います。

それは、決してプロパーのスキルが高くて、SESで派遣される社員のスキルが低いわけでありません。単純に立場の問題です。

SES(客先常駐)は、あくまでプロパーのサポートが主たる目的です。

もちろん例外はあるにしても、基本的にこの構図は変わりません。

こうしたあらゆる格差の中で働いていると、自然と精神的にタフになれます。

逆にこうした環境に対応できないとSESの社員はやっていけません。


③人との距離感の取り方が上手くなる

SESで働いていると定期的に現場が変わります。

その都度、現場の人(プロパーや派遣)と人間関係を一から築かなければなりません。

必要以上に仲良くなる必要はありませんが、

・現場の独自の空気感(賑やかor静か)
・既存の人間関係の把握やプロパーと派遣の距離の取り方

こうした空気感を理解する必要があります。

現場を2〜3個経験すれば、その現場の雰囲気と既存の人間関係、それらを踏まえての自分の立ち振る舞い方が自然とわかるようになります。

「空気を読む力」が養われるというわけです。



④残業が少ない

多くの現場は人件費の関係上、基本的にあまり残業させたがりません。

残業代でがっぽり稼ぎたい人にとってはデメリットかもしれません。

しかし、仕事とプライベートをきっちり分けたい人にとっては非常に利害の一致した環境です。


SES(客先常駐)で働く4つのデメリット

メリットがあれば当然デメリットもあります。

SESで働く中で私自身が感じたデメリットを4つ紹介します。

SESとして働く4つのデメリット

❶仕事でのスキルアップがしずらい
❷キャリアアップしにくい
❸雇用が景気に左右されやすい
❹給料が上がりにくい


❶仕事でのスキルアップがしずらい

そもそもSESがなぜ必要かといえば、客先(クライアント)が人件費削減と効率的に人的リソースが確保しやすいからです。

その会社でやっている業務の穴埋め要員としてSESから人を雇うのです。

よって、仮に人が入れ替わっても業務が回るように、SESの社員に任せる仕事は定型化した運用業務が大半です。

もちろんそれを覚えることで学ぶべきことはたくさんあるでしょう。

しかし、情報の価値というのは、希少性があるから価値が高いのです。

みんなができることを蓄積しても、仕事でのスキルアップは中々見込めません。



❷キャリアアップしにくい

SESで働いていたという経験だけでは、ITエンジニアとしての市場価値は高く評価されません

これは実際に転職する際に感じたことです。

世間一般的にSESで働いていたと言うと、先ほど書いたような大した仕事をしてない印象を抱かれやすいです。

もちろん、自分がやってきた仕事をしっかり説明でき、相手が理解してくれれば問題ありません

ただ、世間からの第一印象は決して高くないということを知っておいてほしいです。


❸景気に左右されやすい

経済的な不況によって客先(クライアント)の企業からコストカットの煽りを受けやすいのが、SES企業から派遣されている社員です。

SES企業では、彼らの多くを正社員として雇用しています。

彼らが客先(クライアント)から契約を満了して待機している場合でも、毎月の給料は払わなければなりません。

また、SES企業の売上は、人を派遣することで得られる手数料で成り立っています。

ただ、それは派遣先で彼らが働いてくれるから成り立つもの。

彼らの働き口がなくなれば会社としても成り立たなくなる可能性が高まるということです。


❹給料が上がりにくい

SES企業の社員が給料を上げる1番の方法は、単価を上げることです。

でも実際のところ、単価は簡単に上がるものではありません。

なぜなら、SES企業間で価格競争が起きているからです。

その理由は、需要(SESを求める企業)より供給(SES企業)が多いからに他なりません。

転職サイトを見るとわかりますが、SES企業は大小問わず多く存在しています。

供給が多いとSES企業間で価格競争が起きます。客先(クライアント)の企業からすれば、当然安い単価がいいに決まってますよね。

よって、たとえ仕事の成果を上げたとしても、こうしたSES企業に不利な状況では、希望通りの単価は上がりにくいのです。


また、SES企業は賞与や昇給の評価制度が曖昧になりがちです。

そのワケは評価者がIT知識に疎いことが多いから。賞与や昇給の評価面談は、基本的にSES企業の営業が行います。

営業の人に今期の自分の実績を話したところで、IT知識が少ないとあまり理解してくれませんよね・・・

結果として、相対的な評価というよりは全員一律の評価になりやすくなるのです。


SESは未経験からのエンジニアの登竜門

SES企業は、IT業界で未経験の人が最初のステップとして働く環境として、十分適した環境だと思います。

私自身、私立文系から新卒で中小のSES企業へ入社しました。もちろんIT未経験からスタートです。

例えば、若いうちから『精神的にタフになれる』のようなことを経験できたことは、今の自分が人と関わる上で大きな財産になりました。

ただ、私は2年半働いたのちに転職しています。

転職した一番の理由は、給料面で不安を感じていたから。

デメリットの『給料が上がりにくい』で記載した通り、毎年の昇給は一律3000円くらい、賞与の基準となる評価も曖昧でした。

「しっかり自分の仕事を間近で評価してくれる企業で働きたい」

そんな思いから、思い切って転職をしました。

全てのSES企業に今回のメリット・デメリットが当てはまるわけではありません。

今後SES企業で働く場合は、是非良い企業を選んでください。

最後まで読んでいただきありがとうございました。